ディスプレイ
ユーザ・エクスペリエンスの強化、新しい大型ディスプレイの組込み、ローカラーおよびハイカラー・ディスプレイによる旧型ディスプレイの置換えにより、各製品は機能が向上しています。
この章では、組込みのGUI製品に対して適切なディスプレイを選択するときに考慮すべきポイントを重点的に取り上げます。
Note
ディスプレイの例
ディスプレイのタイプによって重要な要素が異なるため、適切なディスプレイ技術の選択は複雑になる可能性があります。 この章では、さまざまな技術の大まかな概要について説明し、読者を適切な方向に導きたいと考えています。
どのタイプのディスプレイもピクセルの行と列で構成されています。さまざまな方法で駆動され、内蔵または外部のディスプレイ・コントローラとフレームバッファ用のRAMを備えています。 一部のディスプレイ技術では、他の方式と比べて各ピクセルを頻繁に更新する必要があります。その他のテクノロジーでは、GUIで何か変更が発生した場合のみ更新を行えば、頻繁な更新は必要ありません。
ディスプレイ技術には非常に多くの種類があります。 以下では、最もよく使用されているディスプレイ技術をいくつか説明します。
LCD-TFT
TFTはthin-film-transistor(薄膜トランジスタ)の略で、アクティブなマトリックスを持つLCDディスプレイの一種です。 LCD-TFTは、多様な解像度、サイズ、インタフェース、価格範囲などで提供されているため、組込み製品で広く使用されています。
TFT-LCDの種類としてTNパネルとIPSパネルがあります。 IPS TFT-LCDの例としては、STM32F769 DISCOとSTM32H747 DISCOが挙げられます。どちらも800x480 MIPI-DSI TFT IPS LCDディスプレイを使用しています。 TFT-LCD TNディスプレイの例には、STM32F746G DISCOとSTM32H7B3I-DKがあります。 どちらの技術も品質に違いがあります。いくつかの違いとして色彩表示や視野角があり、多くはIPSパネルの方が優れています。
MIP
MIPとはピクセル内にメモリがあるという意味で、画面上で何か変更が生じた場合のみ電力 / データを必要とするピクセル技術を使用しています。 MIPディスプレイは低消費電力で、フルカラーGUIも低電力で動作します。
ePaper / eInk
eInkディスプレイはローカラー・ディスプレイで、低消費電力、視野角の広さ、読みやすさが求められるアプリケーションに最適です。 TouchGFX Implementer SDATAWAYは、STM32F412上でTouchGFXアプリケーションを実行するeInkディスプレイをデモンストレーションします。https://www.st.com/resource/en/brochure/BRSTM32TGFX0721_web.pdfをご覧ください。
ディスプレイ・インタフェースの概要
ディスプレイはさまざまなインタフェースを介して、マイクロコントローラに接続されます。 TouchGFXはあらゆるディスプレイ・インタフェースに対応しており、STM32マイクロコントローラは、Motorola 6800、Intel 8080、SPI、RGB-TFT、MIPI-DSIインタフェースをはじめとする幅広いオプションをサポートしています。 これらのディスプレイ・インタフェースはパラメータに応じてさまざまに異なります。また、下記の表ではそれぞれの基本的な概要を示しています。
インタフェース | データ・ピン数** | 最大推奨解像度* | 利点 | 欠点 |
---|---|---|---|---|
SPI | 2 | 480x272 | シンプルなハードウェア・インタフェース | 比較的低い帯域幅 |
パラレル8080/6800(FMC) | 8/16 | 480x320 | シンプルなハードウェア・インタフェース、SPIより高速 | ピン数が多い、RGB-TFTよりも低い帯域幅 |
RGB-TFT(LTDC) | 8/18/24 | 1280x800 | 高性能、低コスト | ピン数が多い、パラレル通信によってEMC問題が発生する可能性 -> 制限のあるケーブル長、高いクロック周波数が必要な可能性 |
MIPI-DSI [コマンド・モード](LTDC) | 4/10 | 800x480 | 高性能、少ないピン数 | 複雑なプロトコルとドライバ、高い解像度に対応するために多くのGRAMが必要 |
MIPI-DSI [ビデオモード](LTDC) | 4/10 | 1280x800 | 高性能、少ないピン数、RGB-TFTに類似 | 複雑なプロトコルとドライバ、高いクロック周波数が必要 |
LVDS | - | 1366x768 | EMCの問題が低い -> 長いケーブルをサポート、高速 | LVDSディスプレイとのインタフェースにブリッジが必要 |
- * これらは、TouchGFXで目的の性能を実現するために推奨されるディスプレイ解像度です
- ** クロック信号、タッチ機能、電源、制御信号などに追加のピンが必要になる場合があります。
LCD-TFTディスプレイ・コントローラ(LTDC)の詳細については、このドキュメントを参照してください。
輝度とバックライト
輝度は多くの場合、カンデラ/m²で測定されます。 バックライトはディスプレイで最も電力を消費する部品です。 太陽光の下では、およそ600カンデラ/m²が必要になります。 通常は輝度を上げると温度が上昇し、LEDの寿命が短くなります。
視覚位置と色の反転
製品にディスプレイを組み込む場合、ユーザがディスプレイを見る位置を想定することが重要です。 ディスプレイによっては、特定の位置から見ると色が反転する可能性があります。 つまり、ディスプレイを適切な位置に設置して、ユーザがグラフィック・デザイナーの意図した正しい色を見ながらGUIを操作体験できるようにするのは、意外と困難なことなのです。
色の反転はTNパネルで発生する可能性があります。 SWVフィルムを追加すると、視野角を広げることができます。
ディスプレイの寿命
ディスプレイの寿命は、25℃で半分の輝度に達するまでの時間として定義されます。 製品のライフ・サイクルが長い場合は、このパラメータを考慮する必要があります。
ピクセル密度
ピクセル密度は、1インチまたは1平方インチあたりに表示されるピクセル数で定義されます。 適切なピクセル密度は、エンドユーザ、環境、設計ニーズなどから期待されるレベルによって異なります。 大まかに言うと、6.1インチ、解像度2340x1080のハイエンドのスマートフォンは、1平方インチあたり178,500のピクセル密度で、800x480の一般的な5インチのTFTディスプレイは、1平方インチあたり34,816のピクセル密度になります。
いくつかの標準解像度、ディスプレイ・サイズ、1平方インチあたりのピクセル数(PPI2)で計測されるピクセル密度の例を以下に示します。
QVGA 320x240 | 2.4” (27,777 PPI2) | 3.5” (13,061 PPI2) |
WQVGA 480x272 | 4.3” (16,462 PPI2) | 5” (12,175 PPI2) |
HVGA 480x320 | 3.5” (27,167 PPI2) | |
VGA 640x480 | 5.7” (19,698 PPI2) | 6.4 (15,625 PPI2) |
WVGA 800x480 | 4” (54,400 PPI2) | 5” (34,816 PPI2) |
WSVGA 1024x600 | 7” (28,746 PPI2) | 10.1” (13,808 PPI2) |
一部のアプリケーションでは、非常に近づいてディスプレイを見ないと違いがわからない場合があります。 ピクセル密度の例としては、STM32F476DISCOで16,462 PPI2、STM32F769DISCOで54,400 PPI2が挙げられます。
上記のさまざまなピクセル密度の例の中には、ダイナミック・カラー・レンジとアンチエイリアシングに影響するものがあります。
ダイナミック・カラー・レンジ
ダイナミック・カラー・レンジとは、黒と白など2つのコントラスト色の間の比率のことです。 上の例では、青色と白色には異なるレベルの白と青が含まれています。 左側の画像の方がピクセル密度が低く、右側の画像は多くのピクセルを使用して、表現されたすべての色を表示し、異なる色やエッジ間でスムーズなグラデーションを表現しています。
アンチエイリアシング
ピクセル密度が低すぎると、階段効果が現れることがあります。 アプリケーション内でアンチエイリアシングを使用すると、画像内にある階段状のエッジを平滑にすることができます。 最初の2つの青い円を見ると階段効果が現れています。ピクセル密度が十分でないために、ディスプレイが十分な高カラー・レンジを保持するために十分な数のピクセルを表示できなく、よって十分なアンチエイリアシングを実現できないからです。
環境
使用するディスプレイを選定する場合、環境は極めて重要な考慮ポイントになります。 以下のような点を検討してください。
- ディスプレイに直射日光が当たるか?
- 耐衝撃性を必要とする苛酷な環境で使用するか?
- 手袋をはめて操作するか?
- バンダル・プルーフ(防犯耐衝撃性)は必要か?
- 機械的なボタンのみで操作するか?
これらの質問に答えることで、どのようなタッチ・テクノロジーを選択するのか、あるいはタッチが必要なのかについてよく理解できるようになります。
Note
タッチ / 非タッチ・ディスプレイ
現在では、抵抗膜式、静電容量式(表面型、投影型)、SAWタッチ、赤外線型タッチなど、さまざまなタッチ・ディスプレイ技術が市場で利用可能です。 このセクションでは、これらの技術のほんの一部を取り上げます。
静電容量式タッチ
最も普及しているタッチ技術の1つです。 次の2つのセンシング技術に分けられます。
- 自己容量方式は1本指のタッチに対応します。
- 相互容量方式ではマルチタッチが可能になりますが、水や湿気に弱いという問題があります(TouchGFXはマルチタッチをサポートしていません)。
ほとんどのSTM32 DISCOボードは静電容量式タッチを使用しています。例として、STM32H7B3I DISCO、STM32H750 DISCO、STM32F746G DISCOなどがあります。
抵抗膜式タッチ
抵抗膜式タッチは機械的圧力によって作用する単純な技術で、ADCまたは簡単なタッチ・コントローラのみが必要です。 成熟した技術なので多くは低価格です。 表面の引っかき傷や引裂きに対する保護は優れていますが、バンダル・プルーフは困難です。 また、太陽光の下では読みにくくなります。 STM32F429 DISCOボードは抵抗膜式タッチを使用しており、TouchGFXアプリケーションで使用できます。
非タッチ式
GUIがボタン制御の場合、画像 / ビデオを表示するだけの場合や、別のデバイスから外部制御されるような場合の多くは、製品にタッチ機能を追加しても価値がない可能性があります。 ディスプレイにタッチ・レイヤを追加しなければ、価格も抑えられます。
RAM搭載ディスプレイ
通常、Motorola 6800、Intel 8080、SPI、またはMIPI-DSIインタフェース搭載のディスプレイは、1フルフレームバッファのサイズのRAM(GRAM)を内蔵しています。 これらのタイプのディスプレイは、SPI、FMC、またはDSIホスト(LTDC)を介してマイクロコントローラに接続できます。 2つ目のRAM(フレームバッファ)はディスプレイRAMの外部に設置する必要があり、マイクロコントローラ内や外部RAM内に設置できます。
場合によっては、フレームバッファの保存のために必要な外部RAM(マイクロコントローラの外部)が存在しないために、マイクロコントローラ内の使用可能な内部RAMが使用されることがあります。 マイクロコントローラのRAMが1フルフレームバッファのサイズを下回る場合は、TouchGFXのパーシャル・フレームバッファ機能を使用することもできます。これによりフレームバッファのサイズを非常に小さくすることができます。
Further reading
非正方形のピクセル / ピクセルのアスペクト比
最も一般的なピクセルの形状は正方形ですが、一部のディスプレイでは非正方形のピクセルを使用します。 ピクセル比とはピクセルの幅と高さの比率のことです。 幅が100で高さが100の正方形ピクセルを使用した場合の、アスペクト比は1/1になります。 ただし非正方形のピクセルではピクセルのアスペクト比が異なります。 グラフィック・デザイナーがこのことを考慮していない場合、ビットマップの表示が下の例のように引き伸ばされた状態になります。
カバー・レンズ
ディスプレイは組込みのグラフィカル・ユーザ・インタフェース製品の顔になる部分で、カバー・レンズを追加すると見映えがよくなることもあります。 カバー・レンズによってデザイン、引っかき傷に対する耐性、衝撃に対する強度、色の表示などを向上させることができます。